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最近読んだ本 ( 2024/8 )

最近読んだ本 ( 2024/8 )#

何冊か抜けがある気がするが、まあいいや。


絵とマンガでわかる ウイスキー1年目の教科書#

サントリー佐々木さんのウイスキー解説本。以前購入したウイスキー完全バイブルが辞書的で読み辛かったけれど、こっちはとても読みやすい。ウイスキーにちょっとでも魅力を感じたらとっかかりに良さそうだと思った。

よくわかる思考実験#

いろんな思考実験が広く浅くまとまっている。期待値より内容は薄かったのであまりおすすめはしない。

フェイクマッスル#

細身のアイドルが僅か3ヶ月で超ムキムキに、それを成し遂げた彼の筋肉は「本物」か、ドーピングによる「偽物」か。第70回江戸川乱歩賞受賞作。

ポンコツ新人記者が筋肉をつけていく過程で前向きな思考に変わっていってるのが微笑ましい。筋トレの過程でトレーニーとの心理的距離が近づいている描写を含め、実際に鍛えたからこそわかる世界の広がりを感じられる。困難点をexplicitに明らかにすることは、任意の分野において大事だと思うのである意味で教訓になった。

チ。-地球の運動について-#

全8巻を一気読み。地動説を証明する人々を題材に描いた話。特定の主人公が存在しないストーリー展開が新鮮だった。

「言語化」とか「知識」みたいな抽象概念について考えることが多いが、ヒントになる( というか全面的に共感できる )記述が多かった。メモしておいたものをいくつか。

文字はまるで奇蹟ですよ。あれが使えると時間と場所を超越できる。200年前の情報に涙が流れることも、1000年前の噂話で笑うこともある。…文字になった思考はこの世に残ってずっと未来の誰かを動かすことだってある。そんなの…まるで、奇蹟じゃないですか。 - チ。第3集

「考えろ」そのために文字を学べ。本を読め。物知りになるためじゃないぞ。考えるためだ。一見無関係な情報と情報の間に関わりを見つけ出せ。ただの情報を使える知識に変えるんだ。その過程に知性が宿る。それがあれば止まる勇気と踏み出す度胸が得られる。 - チ。第6集

「知識」って離散グラフみたいな構造をしていて、構築/検索の2つの操作があると思っている。検索は2通りに分解できて、特定の頂点や辺を見つけ出す直接的な検索と類似するグラフ構造を見つけ出す高度な検索。例えば「蒸留する前のウイスキーの原液は何と似ている?」という問いに対して、「ビール」という頂点情報を答えるのは前者、製造過程に想いを馳せて豆腐と湯葉の関係性の部分グラフを連想するのが後者。

自分が大事だと考えているのは、後者の方。前者はネットで検索すればすぐに出てくるし、何よりそれは思考ではない。情報を咀嚼して良いグラフを作っていきたいと思う。

異常【アノマリー】#

ゴンクール賞受賞作。表紙で買ったら、異常に面白くて途中から止まらなかった。言うまでもないが傑作だと思う。ミステリでありながらもSFとしても面白くて、後半は哲学的な問いとしても読み応えがあった。デカルト2.0という言葉に笑った。

こんなに奇想天外でふかい人生の描き方があったとは。- 有栖川有栖

( ネタバレは絶対に踏まないほうがいいと思う。 )

きみのお金は誰のため#

こういう本って流し読みすることが多いけど良かった。誰にでもわかりやすく会話形式でお金の核心を突いている。

最後まで読んだ時の、以下の引用が沁みた。

この鉛筆を作れる人は世界に一人もいない。 - フリードマン

君のクイズ#

「まだ1文字も問題文が出ていない状況で対戦相手が回答し優勝した。なぜか。」っていう問いが面白かったので読んでみた。 冒頭「白い光の中にいた。」の考察で面白かったのが、「白い光の中に〜」で有名な”旅立ちの日に”の確定ポイントを塗り替えているということ。小川さんは作品に絡めたメタな要素を組み込むのが上手いと思った。

クイズと数列当ての類似性の記述が面白い。

  • 数列の1, 2, 4, …の次に続く7 or 8がクイズにおける確定ポイント
    • 7なら階差数列 / 8なら等比数列
  • 他の回答もありうるけど、問題として美しくない
  • 4の時点で押すのはギャンブルで、クイズ界では「ダイブ」と呼ばれる
  • 次の数字が聞こえそうなタイミングで押すのが「読ませ押し」